上原は村上竜司塾長を相手に2分2R、パンチのみのミット打ちを行った。最初のラウンドでフォームを確認すると、2R目は一気にギアアップ。声を上げながらワンツースリー、ボディ、アッパーなどを交えてのコンビネーションを見せる。公開練習の内容にについて上原は「公開練習はいつもパンチでやってるんで。これ以上相手に見せないためにも」と説明した。

　昨年11月の初代ヘビー級王座決定トーナメントでは日本人エースの誇りと覚悟を胸に臨んだが、準決勝戦で敗退。試合後には「次はないかもしれません」と引退を示唆する発言も飛び出していた。今回は7ヵ月ぶりの再起戦となるが、その心境については「今まで見ていて、格闘家はきちんと引退をする選手が少ない。K-1を盛り上げる意味でも、そういうところもちゃんとしないといけないと思いました。11月の試合に敗れた後に考える時間もあり、応援してくれる人たちもいるので、その人たちのためにもきちんとしたやめ方を見せないとダメだなと感じました」と語る。

　今回、対戦する加藤久輝については「戦えることが本当にうれしい。強いと言われている選手だし、体型も自分とそんなに変わらないので。自分は試合中に探っていくタイプなので、相手の研究はそこまで多くはしませんが、少し映像を見たりはしました」。その上で「左ストレートの選手なので、そこは警戒しています。相手も試合に向けてたくさん練習してきていると思うので、やはり試合の中で考えたいと思います」とコメント。

　今回の試合は90kg契約。上原にとっては適正体重と言えるウェイトだ。「今までは体重を落とさないためにウェイトトレーニングを多くしていました。今回は90kg契約で減量も少しあるので、スピードトレーニングをメインにしています。普段の練習が違うので、試合での戦い方も変わってくると思います」と、新しいスタイルを見せることを宣言。「今までは相手が大きかったりで、出したかったものも出せなかったりしていました。そういう部分もいろいろ出せるので、全然違うと思います。今まで100kgの階級でしたけど、僕は試合の時は90kgなかったですから（苦笑）」

　だが適正体重であるということは、本人曰く「言い訳のできない階級」ということでもある。「負けたら後はないですよね。逆に、勝ったら90kg級での世界トーナメントを実現させて主役になりたい」と、意気込みを新たにしていた。「今回、モチベーションの高い状況と相手だし、練習メニューを一気に変えたことで伸びしろもたくさん見つかったので、この試合で勝って、終わったらまたその伸びしろをしっかり伸ばして、自分がどこまで成長するかが楽しみでもあります」。

「90kgはスピードとパワー。ヘビー級でもスピードのある選手はいますが、スーパー・ウェルター級の選手たちに近いような技術も入った上でのスピードある戦いを見てほしいですね。そういう戦いを見せた上で、勝つ自信はもちろんあります。今まで僕は自分より大きい選手たちとばかり戦ってきました。今回は僕と同じサイズの相手なので、負ける気は全くしません。ずっと、僕と同じサイズの選手はいなかったので。倒して勝てると思います」と、90kgでの戦いに強い自信を見せる上原。「90kgでも世界中からいろんな選手たちに参戦してもらいたいので、ここで僕がしっかりと勝って、この階級をアピールできたら」と意気込む。

　今年4月には、昨年のヘビー級トーナメントでともに世界と戦ったKOICHIが、事故で急死するという出来事があった。「練習中も、一人で車を運転している時、お風呂に入っている時など、何度もKOICHI選手のことを思い出しちゃうんですよね。本当に悲しいですし、もっと一緒に練習できてたらなとか思いますね。一緒に練習するたびに、『今度ごはん行きましょう』と話していたんですけど、実際に行くまでには至らなくて、行っておけばよかったとか思っちゃって。今回はKOICHI選手の分もしっかり戦って勝ちたいなと思います」と、“戦友”への思いをしみじみと語った。

　最後には「6月17日には最高のKOを見せます！」と力強く締めくくった上原。初参戦の加藤を倒し、90kgという新たな階級を認めさせることができるのか？　注目だ！